三郡縦走。福岡県の岳人であれば誰もが知っている福岡市近郊の縦走ロングルートである。その距離は約20km。距離は長いが、比較的なだらかで展望もよく、宝満山からでも若杉山からでも楽しめる縦走路である。 今回、GWの遠征登山に備えたボッカ訓練のため、篠栗駅から竈門神社までの春の三郡縦走路を歩いた。 |
【山行日】 | 2004年4月10日 天気:晴れ | ||
【コース&タイム】 |
篠栗駅前(8:35)〜若杉楽園(9:55-10:05)〜若杉山(10:48-58)〜ショウケ越(11:34) 〜鬼岩谷(12:16-20)〜砥石山(12:40-13:17)〜前砥石山(13:32)〜三郡山(14:31-56) 仏頂山(15:41)〜宝満山(15:56-16:14)〜山の図書館(17:45) 【行動時間】9時間10分 |
||
【主なピーク】 | 若杉山(681m)、鬼岩谷(774m)、砥石山(826m)、前砥石山(805m)、三郡山(936m) 仏頂山(868)、宝満山(829m) | ||
【交通手段】 | 西鉄バス(行橋〜天神〜篠栗駅)、西鉄電車(二日市駅〜天神) | ||
【地図】 | 「篠栗」「大宰府」2.5万分の一 | 【メンバー】 | T(23kg)、K(17kg) |
▼ アプローチ(行橋から篠栗駅へ) | |
可愛い駅舎の篠栗駅前 |
今回は縦走であるので公共の交通手段を利用する。行橋6:00発の天神行西鉄高速バスに乗り込む。平日は通勤客で利用が多いようだが、日曜日のこの時間は比較的少ない。
今回はボッカ訓練であるが、嬉しいことに山仲間のKがボッカ訓練に一緒に付き合ってくれることになった。歩く距離が長いだけに相棒がいると気が楽になる。 7:30、天神郵便局前バス停でKと合流する。ここから、篠栗駅方面行きのバスへ乗り換える。バスの待ち時間の間に、鉄アレイと水で荷物重量を調整する。今回の設定はT(23kg)、K(17kg)である。 7:55バス発、8:30に今回の登山開始となる篠栗駅前に到着する。(バス運賃\350) |
▼ 篠栗駅から若杉山へ | |
住宅の中の道を行く。目の前に若杉山が見える。 |
8:35篠栗駅前出発。しばらくは一般車道歩きである。登山靴だと歩きにくいので、とりあえず登山靴を片手に出発する。
住宅街の一般道をひたすら進む。目の前に鉄塔の立つ若杉山が見えてくる。 若杉山へは山頂付近まで車道が通じている。その車道を横ぎりながら山道も通じている。 車道の途中に「奥の院へ」と示す山道の前で、靴を履き替え、荷物を整える。山道もつかの間、すぐに車道へ出る。 しばらく車道を歩いた後、途中から手すりが整備された階段状の登山道へ入って行く。 |
車道の途中にある登山道入り口。 |
山道は階段や手すりなども整備されている。 |
若杉楽園に到着。 |
9:55、若杉楽園に到着する。 ここはキャンプ場にもなっているらしく、広々とした広場やトイレ、炊事場がある。 ここで休憩をとる。終わりがけの山桜と新葉が出た紅葉の緑色が綺麗であった。春の日差しの中、荷物が重いせいか、既に汗ビッショリとなる。 休憩の後、御堂の脇の山道へ入って行く。 |
若杉山のご神木「分け杉」 |
登山道らしい山道を行くと、大きな杉が現れる。若杉山のご神木である「分け杉」である。杉の周りには柵がされており、その前にこの「分け杉」と「若杉山」の歴史的由来を示した看板がある。 かの昔、神功皇后が三韓征伐の前にここに立ち寄り、お祈りの際に、香椎の綾杉を分かち植え、これを「分け杉」と呼んだ。その「分け杉」が「若杉山」の山名の由来となったらしい。 近くに寄って見上げると、大きな杉である。歴史の風格を感じさせてくれる。 またここ若杉山の山頂にはイザナギノ尊を奉った太祖神社上宮もある。 |
太祖神社への急な石段 |
若杉山山頂直下には太祖神社へ続くかなり急な長い石段が佇む。結構長い階段であるので、ここは気合を入れ、登り始める。荷物が重いせいか、はたまた日ごろの訓練が足りないせいか、この階段は非常にきつかった。汗が噴き出て、息が上がる。まだ、縦走の最初の山への登りであるのに、体が思うように動かない。この分では宝満山までもつだろうか不安になった。 Kの方は荷物を重そうに担ぎながらも一歩一歩確実に登っている。後で聞いたところによると、Kもこの最初の登りの階段はかなりきつかったらしい。それを聞いて安心した。やはり、荷物の重さが効いているのであろう。 |
太祖神社にあるイザナギノ尊像と道の脇に佇む不動明王像 |
|
若杉山頂にて |
10:48、若杉山頂到着。若杉山の山頂は山頂北東部のNTT鉄塔の横にある。展望はほとんどきかない。 ここで少し休憩する。石段がきつかったが漸く最初の山頂に立て、ほっと一息つく。しかし、まだ先は長い。 とりあえず、缶ビールを1本だけ一気に飲み、気合を入れなおす。もう、飲んでる〜!とKが横目で見る。 軽く行動食を口にし、いよいよ縦走へ出発する。 |
▼ 若杉山頂からショウケ越へ | |
展望抜群!縦走路が見渡せる「若杉の鼻」 |
縦走路はNTT鉄塔の脇から東へ続いている。少し下ると南面に露岩帯があり、目の前に大展望が開ける。「若杉の鼻」である。 ここからの展望は素晴らしいのひとことである。目の前に砥石山がデーンとそびえ、その右奥にレーダードームのある三郡山。これから進む長い縦走路が目の前に広がる。 若杉からの縦走であれば、これから始まる縦走の意気込みが倍化し、また宝満山からの縦走であれば、今まで歩いてきた長い縦走路を感激で振り返るのに絶好の場所であろう。 ゆっくりしたいが、時間がないので早々に下りに取り掛かる。 |
ショウケ越手前にある山小屋 |
若杉山からショウケ峠までは一気に下る。その標高差は176mであるが、いくつかのアップダウンを繰り返しながら下って行く。 鬱蒼とした杉林道になるとショウケ越は近い。ショウケ越手前の杉林の中に少し朽ちかけた山小屋が見えてくる。 11:34、ショウケ越に到着。ショウケ越には立派な陸橋がかかっており、その下を須恵町と穂波町を結ぶ県道が走っている。コンクリートで固められているのが殺風景だが、車道を直接渡らずに上を通れるのが嬉しい。 |
ショウケ峠。陸橋の下を車道が走っている。 |
立派な陸橋を渡って、砥石山への登りに向かう。 |
▼ ショウケ越から砥石山へ | |
鬼岩谷ピークにて |
ショウケ峠からは砥石山への比較的長い急な登りが始まる。日差しはあまり強くないが、風もあまりないので汗ビッショリだ。 このあたりから、荷物の重さが肩に食い込むように効いてくる。 鉄アレイでの重量調整はコンパクトでありながら重さを増すことができるが、何か不自然な重量のかかり方を肩に感じる。 重量に喘ぎながら登ると鬼岩谷774mのピークに出る。ここには三角点がある。 |
樹林に囲まれた砥石山山頂にて |
鬼岩谷から少し下り、再び上り返すと樹林の中の砥石山頂に到着する(12:40)。砥石山山頂は平らで比較的広いが樹林の中なので展望は得られない。夏の暑いときなどは木陰で涼しい山頂であろう。 山頂真ん中あたりに石があり、休憩するにはちょうど良い。ここで、漸く昼食とする。二本目の缶ビールを開け、一気に飲み干す。乾いた喉に冷たいビールが美味い!我々の他に誰もおらず、静かな山頂である。 そう言えば、若杉山から砥石山まで他の登山者に会っていないなあと思っていると、三郡方面からの一組の登山者が通り過ぎて行った。 |
▼ 砥石山から三郡山へ | |
前砥石を通り過ぎる。 |
砥石山でゆっくりした後、再び縦走路を行く。 ゆるやかに下って行くと5分ほどで前砥石を通過する。 目の前に次に目指す三郡山のレーダードームや鉄塔のある山頂が見えてくる。 |
気持ちの良い春の縦走路 |
回りの木々はまだ新緑が芽吹いてなく冬枯れであるが、逆に明るくて気持ちよい縦走路である。
登山道の脇には黄色い水仙の群落も咲いており、春の気分たっぷりだ。 しかし、登山道は次第に急な登りとなってくる。そろそろ疲れが出てきたせいか、ここからの登りがかなりきつく感じる。 登りの途中にふと脇を見ると白いツクシショウジョウバカマが咲いていた。足を止め、あたりを見回すと、なんと横の斜面一帯にいっぱいのショウジョウバカマが咲き乱れている。かなりの群落に驚く。 |
三郡山鉄塔が近づく |
思いがけないショウジョウバカマが元気を与えてくれた。 だんだん登るにつれ、木々の間から覗く三郡山の鉄塔が大きくなってくる。 三郡山への直前の登りでまたペースが落ちる。砥石山からずっとトップを行くKの姿が遠くなっていく。 樹林を抜け、草の原になると三郡山頂は近い。鉄塔の横を上がっていくと露岩がゴロゴロした三郡山頂へ到着する(14:31)。 |
三郡山頂にて |
三郡山頂からは展望抜群である。 目の前に宝満山方面の山並みが続く。 しかし、気になるのがやはりレーダードームや鉄塔などの建造物だが、こればっかりは仕方が無い。 ここで、手持ち最後のビールをゆっくり味わいながら飲む。 しばらく展望を満喫した後、いよいよ本縦走の最終の主ピークの宝満山へ向かう。 |
三郡山頂から宝満山方面を望む |
三郡山頂周辺は鉄塔が林立 |
▼ 三郡山から宝満山へ。そして竈門神社へ。 | |
宝満山への縦走路 |
三郡山からは急に登山者の数が多くなり、賑やかな縦走路になる。広々とした縦走路は雰囲気がよく、とても心地よい。 縦走路は気持ちいいが、そろそろボッカの荷物の肩への食い込みが激しくなり、ちょっとした登りも足取りが重くなる。 仏頂山を過ぎると、宝満山の岩場の直下に出る。鎖のある大岩を登り切ると、目の前が開け、宝満山の山頂へ飛び出る。山頂へは岩場を巻いて登ることもできる。 |
仏頂山を通り過ぎる。 |
宝満山直下の岩場を登ると、そこは開けた山頂。 |
▼ 三郡山から宝満山へ。そして竈門神社へ。 | |
山頂に立つ上宮 |
宝満山頂は360度の大展望であり、福岡市街や古処方面の山など見晴らしは抜群である。
山頂の一角には上宮が佇む。 山頂の露岩に上がると更に展望がよい。目の前に、今まで歩いてきた長い縦走路が広がる。砥石山に向こうに若杉山が遠くかすんで見え、感慨深くなる。 露岩周辺では沢山の人たちが展望を楽しみながら、ゆっくりとくつろいでいる。 展望を楽しんだ後、いよいよ最後の下りに入る。 |
山頂露岩から望む砥石、若杉への山並み |
山頂露岩はのんびり休むには絶好。 |
▼ 三郡山から宝満山へ。そして竈門神社へ。 | |
宝満山名物の百段ガンギの石段 |
誰か知り合いはいないかと、下りはひとまず、キャンプ場へ行ってみる。夕方近いせいか、残念ながら人は誰もいなかった。 女道を下り、中宮跡を過ぎると宝満山名物の百段ガンギの石段が迎えてくれる。一段一段下るたびに、荷物が肩に食い込む。 一ノ鳥居を過ぎ、池を見ながら下っていくと漸く一合目の鳥居をくぐり車道へ出る。 |
車道沿いにある「山の図書館」 |
17:45、車道を竈門神社へ向かおうとすると、目の前にかなり賑やかなログハウスがあった。
「山の図書館」である。話には聞いていたが、なんとちょうど今日がオープンの日らしく
祝い酒を飲みながら大勢の関係者で賑わっている。うらやましそうに外から覗いていると、
中の人が、「入らんね。」としきりに誘ってくれる。折角なので、中を見学させてもらうことにした。
この図書館のことなど、いろいろお話をお聞きする。 そうこうしているうちに、山仲間の福岡のYさんが、わざわざお出迎えに駆けつけてくれた。それも、嬉しいことに 缶ビールの差し入れ付きである。 |
中には沢山の山の本がある。 |
図書館にはかなり古い山の本も多い。今度はゆっくり来たいものだと思った。山の本に囲まれながら、少しであるがゆっくりさせていただいた。 本来なら、まだここから大宰府駅まで歩くはずであるが、軟弱にもYさんの車で、駅まで送ってもらった。 Yさん、わざわざお出迎え、ありがとうございました。 そして、Kさん、長いボッカ縦走お疲れさまでした! |